'Tis Not Eaten When Rotted.
雲の部屋。跪く少女。
視界を遮る、白い霧を、少女が指で丁寧にはがしていく。
その先にいるのは一人の少年。少女は探るように、その少年を見つめている。
5、雲の夢
「まだ捜すの?」
少女が呟く。
「こんなに大事にしてるのに…」
彼女の遥か下で少年は、歌を歌う。その歌を、拾い上げるように少女が手を広げると、
彼女のいる空間に、少年の歌が流れてくる。その歌は、うろ覚えらしく、どこか頼りない。
少女の視線の先に少年。少年の視線の先に、海。
彼女のまつげの奥に、悲しげな色がたゆたう。
「この歌は…」
少女の心を戻すのは、別の少年の声。振り返れば、白い少年の姿。
「青い種の奴が歌っていた歌だ」
「そうね」
ため息交じりで答える少女。
白い少年が下に広がる大地を見下ろし、無表情で言う。
「オレンジの種だね」
「…アンフィ、何しに来たの」
少女は上目遣いで睨み付ける。アンフィと呼ばれた少年は、まっすぐその目を受け止める。
「これは、困った事態だね」
少女の質問には答えず、アンフィはあいまいな表情をつくる。
下の少年の歌声は、いつのまにか止まっている。
白く無機質な部屋には冷たく静寂が漂う。
「世界を司る者といっても、結構無力なんだな」
アンフィは静かに言った。
「まだ」
少女は言いかけて口を閉じる。
「まだ、何?」
アンフィの冷淡な視線の先で、少女が首を振る。
「なんでもない」
その姿を見て、少年は苦笑する。
「まだ種はまかれていない、だろ?」
「…」
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