'Tis Not Eaten When Rotted.
5-2
「だけど、時間の問題だな」
アンフィが、下を見やると、少年が林の中へと駆けていくところだった。
「利用することしか出来ないくせに」
少女が、口の中で呟く。一瞬アンフィの目の中で、何かが閃き、再び、
冷ややかな眼差しに戻る。少年は少女にゆっくりと歩み寄る。
「そうでもないけど?」
少女の目線に合わせるように頭を下げる少年。
それを見返す少女の顔には、不信が浮かぶ。
少年は顔を上げると、踵をかえし、彼女から離れる。
数歩先で立ち止まり、体を半分だけ彼女のほうに向ける。
意味ありげな視線を彼女に投げかけると正面を向き、真顔になる。
ゆっくり両の手を持ち上げると首を心もち下げ、
視線を手のひらに落す。
しばらく躊躇うような時間が過ぎ、彼は手を、自分の胸に当てる。
さらにそれ以上、奥へ。
手は胸の中に吸いこまれ、少年の表情に僅かに嶮しさが宿る。
少女はその様子を、息を止めて見つめていた。
やがて少年は腕を手前に戻し、彼の胸からは、光り輝く白い塊が現れる。
少女の目に、白い輝きが映りこむ。
慎重にそれを胸から取り出すと、アンフィは、息を吐く。
手にあるそれは。
「種…」
少女が、見開いた目で、声にならない声でささやく。
白く光る小さな種が無数に、木の枝のようなものに生っている。
「どう?」
少女に捧げるように、種を持ち上げてみせる少年。
はっとして、少女は顔を逸らす。
「趣味が悪い」
少女は思わず胸に手を当てる。けれど、そのことも気に入らない様子で、
すぐに胸から手を払う。
アンフィは、再び誰もいなくなった砂浜に目を落す。
「あいつが、いなくなればいいんだろ?」
少女が取り除いた霧の穴を見つめて、少年は呟いた。
そこは、青い種の持ち主が歌う場所。そして、
「なぁ、マアル?」
アンフィは少女の名を呼ぶ。
アンフィを見上げるマアル。
けれどそこは、オレンジの種の少年が、さっきまでいたところ。
前へ***
続く...***
在ル種topへ