'Tis Not Eaten When Rotted.
4-2
シュエルはその場に腰を下ろし、過ぎてゆく時間とともに過ごすことにした。
視界は悪くても、波の音と潮の香りが、海の呼吸を教えてくれる。
あの少年は、ここで何を思い、過ごしているのだろう?
海は、彼にとってきっと大切な場所。昨日の歌は、彼だけが知っている世界の歌。
少年の歌声が、シュエルの頭の中でよみがえる。
緑や青の色彩を覆う白い粒子、ゆったりとした、けれどさびしいその歌。印象的だった
フレーズが繰り返し心の耳に響く。シュエルはなんとなく、それを口ずさんでみた。
記憶に強く残っているところを、繰り返す。あの少年のように、深い音は
出せないけれど、やはり悲しげな歌であることに、かわりはない。
シュエルの口から出る歌は、静かに波に溶けていく。
彼は、歌うのをやめた。
目を閉じ、もう一度、あの少年の歌を思い出す。しばらくそのままでいると、睡魔が
襲ってくる。心地よさに身を任せていると、夢か現かわからない中で、波音が遠のき、
かわりに歌が鳴り響いてくる。歌とともに視界に広がる霧に包まれた景色。
薄い衣を幾重にも羽織って、背後の光景は隠されている。目を凝らしてみれば、
霧の間から見えてくるのは、穏やかな水面と、生い茂る木々。
この景色は…
シュエルはゆっくりと目を開けた。
まだ、夢が続いているんじゃないかと思うような、白い大気。
霧をまとい朝を迎えた砂浜の姿を見て、シュエルは確信した。
あの少年の歌の世界が、今目の前に広がっていると。
彼の歌が、この瞬間の海を描いていたのだと。
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5、雲の夢へ***
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