'Tis Not Eaten When Rotted.
3-2
思わず顔がほころぶ。みればリスはあちこちにいる。なぜ今まで気づかなかったのだろう。
ちょうど正面の木の下には白い可憐な花が、少し俯いた姿で咲いている。
フォレは花を好むタイプではなかったけれど、ひっそりとさく花に心惹かれた。
異変は突然訪れる。花のさらに手前、何もなかったところ。
蒸気が空気を揺らすように、空間が歪みはじめる。それが数秒続くと、ゆがんだ中から
いきなり何かが現れた。よく見かけるその形は、靴。続いてその上に、ズボン、
よれよれの緑のシャツ。下から順に、ゆっくりと人間の姿が浮かび上がってくる。
フォレは目の前の出来事にただ、目が釘付けになっていた。正直何が起きているのか、
わからなかった。頭は理解していなかったが、体はわかっていた。目は見開らかれ、
鼓動がどんどん早くなる。最期に少年の頭が現れたとき、いきなりフォレは立ち上がった。
目の前の少年が、びっくりしたように顔を上げ、二人はしばらく見つめあう。
お互いに、引きつった顔。体はかたく硬直している。二人の間にある、緊張感。
林を抜けるゆるい風。
フォレの頭の中で、混乱と冷静さが渦をまく。目の前の異常な出来事に恐れ、同時に、
向こうも混乱している様子を、感じ取る。自分がどういう行動をとればいいのかわからず、
体は固まったままだが、頭の中は色々な事が濃縮され動き回る。
フォレが一つ回答を見つけ出したとき、少年が口を開いた。
「見た?今の」
「見た…」
少女が頷く。フォレは、見つけ出した答えを投げかける。
「あんたもしかして、ヴァン?」
「うん」
ヴァンが応える。
どこかで鳥が飛び立つ音。言葉のみつからない沈黙。
リスがせわしなく二人の間の地面を駆け抜けていく。フォレは頭に浮かんだ言葉を吐いた。
「それ、超能力?」
「え?そうなのかな」
ヴァンも、思ったままを言う。しばらく考えて、
「超能力か、そうか」
独り言のように呟く。
「3日間、どこに行ってたの?ほかの国とか?」
少女の質問に、戸惑う様子のヴァン。
「えっと、なんていえばいいのか…」
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