'Tis Not Eaten When Rotted.

雲から漏れた陽の光が、まっすぐ地上へとさす。
光線を瞳で直に受け止めてしまった少年は、思わず瞼へ手を伸ばす。
立ち止まった少年を追い抜いて、ほかの子供たちが海へとかけていく。

1、 光の空

「早く来いよーシュエル」
真っ先に海へとたどり着いた友人が、彼に声をかける。
「おー」
手を大げさに振ってそれに応えるが、シュエルの足は動かない。
波はいつものように静かで、空の青さを穏やかに映していた。
波打ち際では友人たちが、大きな声を上げてじゃれあっている。
彼らの動きに合わせて、飛沫が光の玉となって舞い上がる。
いつもは誰よりも早くその輪の中に飛び込んでいく彼だったが、今日は違う。
一人残り、真剣な顔で、あたりを見回している。
近くの波打ち際から、もっと遠くの海岸線、広がる砂浜…。
一通り見渡した後で、シュエルは一度友人たちのほうを見る。皆遊びに夢中で、
ほかの事に意識がいく様子はない。そのことを確認すると、彼は海岸に背を向けた。

まだ日が昇る前、空が濃紺の衣をまとっていた頃、シュエルはなぜかいつもより早く
目が覚めてしまった。何か夢を見ていた気がするが、目覚めとともに忘れ去る。
目覚めた少年を包むのは、降り積もるような静けさと、朝の迎えを待つだけの闇。
眠気は夢とともにどこかへ行ってしまった。
外から早起きの鳥の声がきこえると、彼は悪戯でも思いついたようにベッドから飛び出した。
小さな冒険に出かけるように、少し心をざわつかせながら、家のドアをあけ、外に出る。
すると、目の前にあるのは彼だけの夜の世界。誰も知らない。
きっと周りの家の誰もが寝ている。そう思うと、シュエルは、心が開放されるような、
不思議な心地よさを感じた。夜の闇は、星明りのおかげで少し柔らかい。
磯の香りを感じ、軽く風があることに気づく。自然と足は海岸へと向かう。
同じ夜の闇の下でも、時間によって感じは変わる。
今の時間は、暗闇の中から何かを探すよう…例えば宝石…。
海へと向かう路の途中、シュエルはぼんやりそんなことを考えていた。
住宅街を抜けると小高い丘があり、そこを登ると向こう側の林と海が見えるようになる。
丘の手前からだんだん早足になり、丘の上につく頃には小走りになっていた。
軽く息を弾ませ、見晴らしのいいところで一度立ち止まる。
闇の向こうに、白い波の線が伸びては消えていくのが伺える。


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